手指消毒アルコールの代替品をつくってみよう

まえかわのぶひろ

前川修寛

お読みいただきありがとうございます。
現在、不足している手指消毒アルコールの代替品にもなる、水がなくても使える手洗い溶液の作り方を公開しています。

手指消毒アルコールがない!

令和2年2月頃から「武漢肺炎」の流行によって、手指消毒アルコールが品薄になり、ネット上では高額転売が続き、なかなか入手できない状態が続いています。

厚生労働省も酒造メーカーにに協力を依頼し、臨機応変な解釈で手指消毒アルコールの代替にもなるアルコール製造に動きはじめました。

「手指消毒用エタノールの優先供給スキーム」(リンク先PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000608225.pdf

4月から出荷が始まったものの、ネット上では高額転売が続いています。

消毒アルコールは医療機関を優先させるため、一般家庭への品薄状態はしばらく続きそうです。でも、厚生労働省の通達の中で注目したい箇所があります。

「手指消毒用エタノールがなくても、石けんやハンドソープなどで手洗いを丁寧に行うことで、十分にウイルスを除去できます」

と明記されています。

まえかわのぶひろ

前川修寛

「アルコールのように石けんを水がなくても使えるようにできないか?」と考え、一般家庭でも簡単に作れるハッカ油石けん水を考案しました。

石けんでもよい場所などで手指消毒アルコールの利用を一部代替して使うことで、医療機関や介護施設などに優先して回せば、多くの人が助かるでしょう。仕方が無く転売屋から消毒アルコールを買う必要はありません。

感染症「専門外」ですが…

まえかわのぶひろ

前川修寛

実は私、前川修寛(まえかわのぶひろ)は化粧品レベルでの商品の開発・販売経験があります。その事を書きます。ご存じであれば、飛ばしてしてください。読み飛ばす
まえかわのぶひろ

前川修寛

2020年からさかのぼる2005年のことです。わたしは当時テレビでも取り上げられた「耳の洗浄水」の開発・販売をしていました。
まえかわのぶひろ

前川修寛

耳の洗浄水(2004~2008年販売)

【説明サイト】
http://mimiral.com/mimi_00.htm

開発のきっかけは補聴器の使用でわたしが炎症やにおいなど耳の問題に悩まされていた事からでした。当時は耳鼻科でも対処療法以外はお手上げの状態でした。

既存メーカーによる耳の洗浄液はあるにはありましたが、不評でした。また、当事者の耳の不快感さを「我慢するしかない」と言われる状態になっていました。

それらの問題を解消するため、生まれた商品が「耳の洗浄水」でした。

合成成分を使わないのが特徴でしたが、前例がないため、開発は手探りの状態でした。材料も簡単に入手できる時代ではありませんでした。

開発では花崗岩由来の水溶液による皮膚細胞の活性化、滅菌・ウィルスの不活化やミネラル成分のはたらき、消毒アルコール、石けんと合成洗剤の比較、安全性、栄養学など広範囲にわたる調査と研究、成分の効能の調査、さらに薬事法(現薬機法)の表示ガイドラインの調査と研究も行っていました。

「耳の洗浄水」の開発では自分の耳で確認して、濃度などを調整して、私と同じように耳の問題に困っているという約1000名の方々に使ってもらい、そのうち、アンケートに協力してくださった約300人の方から「解消した」との回答をいただきました。

その際にアルコール消毒液に触れて赤くなったり、かゆくなったりするなど消毒アルコールが使えない人も多いことがわかりました。

「解消しなかった」少数の方は慢性炎症の方だったのですが、それでも手術した傷あとに使ったら、不快感が続いていて夜は眠れなかったのが数年ぶりに眠れた!と喜びの話がありました。

また、問題の原因が耳のかきすぎだけでなく、当時は補聴器の耳型洗浄で中性洗剤を使っていることが原因だと突き止めました。本来は200倍以上に薄めないといけないのですが、調整がわからず濃い濃度で使ってしまう人も多かった事も一因です。

わたしが営業で「耳型の洗浄には中性洗剤を使わないでください」と提言した事で、全国の補聴器販売店で賛否はあったものの、中性洗剤を使った洗浄の奨励は行われなくなりました。こうして、補聴器の利用者で耳の問題に悩まされる人は減っていきました。

こうして誕生した「耳の洗浄水」は2004年12月に発売を開始、非常に好評で、雑誌やテレビなどマスコミでも取り上げられました。

まえかわのぶひろ

前川修寛

耳の洗浄水は雑誌などでもとりあげられました
まえかわのぶひろ

前川修寛

テレビの情報番組でも紹介いただきました。2006年3月1日KBS京都の「Live5」内において紹介され、好評をいただきました。
まえかわのぶひろ

前川修寛

2006年3月1日KBS京都の「Live5」内にて紹介いただきました。

こうして、東急ハンズやロフトでも販売するなど販売網を拡大して、東北地方のお店ではしもやけ対策で売れているとのお声もいただきました。しかし、事情あって2008年8月に販売を中止しました。

お客様からの再販希望の声もいただいたのですが、残念ながら実現には至っていません。しかし、今回の「令和の国難」に当時の経験が応用できる事と、アルコールが使えなくて困っている人達を一人でも多く助けたいと思い、考案しました。

以下を必ずお読みください。ご了承いただけましたら、説明に入りましょう。

必ず守ってください

利用は自己責任でお願いします。
利用は商業目的でなければ無料です。
改良のため予告なく修正する場合があります。
常識の範囲を越える引用や転載はしないでください。
自分には合わないと感じたら、すぐ中止してください。

作り方

材料を揃える

まえかわのぶひろ

前川修寛

材料を揃えましょう。

使う材料は次の条件です。

「入手しやすい」 「製造が簡単」 「根拠がある」

として、液体石けんを使います。

最初に知っておきたい事を。固形石けんを水で溶かしても濃度の調整が難しく、液体石けんになりません。

同じメーカーでも化粧用石けんと台所用石けん、洗濯用石けんと謳っているのは家庭用品品質表示法と薬機法で用途を表示するように決められているためで、純石けん成分は同じだそうです。

選ぶ際に注意したいのはラベルを見て、成分が純石けん成分(脂肪酸カリウムあるいは脂肪酸カリウム+脂肪酸ナトリウム)だけで、純石けん以外の成分が入っている製品は使いません。

商品によって変わりますが、純石けん成分の濃度は27~37%になっています。この範囲のものを選ぶといいでしょう。

まえかわのぶひろ

前川修寛

純石けん成分に抗菌性と抗ウィルス性がある根拠を確認して使っています。

今回はドラッグストアやスーパーでの取り扱いが多い、ミヨシの台所用液体石けん、洗濯用液体石けんを使いました。他にも太陽油脂やシャボン玉液体石けんなどの良い商品があります。

台所用液体石けん例
台所用液体石けん例

洗濯用液体石けん例(大ボトル)
洗濯用液体石けん例(大ボトル)

台所用液体石けんラベル例
台所用液体石けんラベル例

液体石けんは成分表示ラベルを見て、純石けん成分のみで作られているものを選びます。

成分表示ラベルに「台所用合成洗剤」とある中性洗剤など合成洗剤類は絶対に使わないでください。

容器は携帯できる事も考えて100円ショップで購入できる化粧品詰め替え用の100ml 容器を使いました。

そして、必要な材料です。
保湿剤としてグリセリンとハッカ油(メントール)。

酸化防止剤としてエタノールがあるとよいですが、ない場合は台所用消毒アルコールで代用します。焼酎とホワイトリカーでも代用できると思いますが、未確認です。

グリセリン例
グリセリン500mlサイズ例

ハッカ油例(20ml)
ハッカ油20mlサイズ例

ハッカ油例(100mlサイズ)
ハッカ油100mlサイズ例

ハッカ油は20mlサイズがドラッグストアで入手が容易です。

POINT

【材料】
台所用液体石または洗濯用液体石けん
成分は純石けん成分のみ27~35%の濃度
固形石けんと液体石けんは別物
携帯できる容器
保湿剤グリセリン
ハッカ油(メントール)

【あればいいもの】
酸化防止剤としてエタノールがあるとよい
台所用消毒アルコールでも代用できる

まえかわのぶひろ

前川修寛

使いやすくする事を前提に材料を配合していますが、材料が液体石けんと水、ハッカ油の3つだけでも、近いものがつくれます。

液体石けんを入れていく

容器の3分の1を目安に液体石けんをいれます。

液体石けんを容器の3分の1入れたところ

純石けん成分の濃度は10%程度が皮膚にのばしやすく、また乾きやすいことを確認しています。

まえかわのぶひろ

前川修寛

容器の目分量で把握できるようにしていますが、濃いと使いにくいのでその場合は差し水をして調整してください。

保湿剤を入れる

グリセリンを入れます。
最初は保湿が足りないと感じたら、調整して加えるようにするといいでしょう。量は5%までを目安に。

グリセリン例
グリセリン例

液体石けんにお湯を入れていく

お湯を容器に入れます。あとから酸化防止剤とハッカ油を追加で入れるので、容器いっぱいにならないよう、余裕をもたせて入れます。目安は画像の矢印の位置です。

容器にお湯をいれたところ

お湯の温度は40度くらいが一番なじみやすくなります。50度以上であまり熱いと容器が変形してしまうのと、冷めた時に石けんがゲル状態に固まってしまうことがあります。

お湯は水道水で大丈夫ですが、こだわりたい方はミネラルウォーターまたは井戸水をホーローやかんで沸かして使うといいでしょう。

容器を振って攪拌します

まえかわのぶひろ

前川修寛

精製水でこの石けん水を作るメリットはありません。売り切れると医療器具の洗浄で使う人が大変困るので、必要がなければ買うのはやめましょう。
POINT

容器の3分の1に液体石けんをいれて
グリセリンは5%までを目安に
お湯の温度は40度
容器の注ぎ口の部分をのこして入れる
振って攪拌します

まえかわのぶひろ

前川修寛

工夫して使いやすくしましょう。

可能なら変色防止も

酸化防止剤としてアルコールを少し入れます。入れなくてもいいですが、その場合は1ヵ月を目処に使い切るようにしましょう。
 
適量は5%を目安にします。

今回は手元に少量あったエタノール(アルコール濃度70%)、台所用消毒アルコール(推定アルコール濃度40~55%)で使えることを確認しました。

試していませんが、ホワイトリカーや焼酎でも代用できると思います。
 

仕上げにハッカ油

仕上げに入れるハッカ油の香りは熱に弱く、42~43℃のお湯で「昇華」する性質で、それ以上の温度だと消えるのでお湯を冷ましてから使います。

石けん水が100mlの場合、1~2%だと1~2mlで、1mlなら5滴程度が目安になると思います。香りが石けんのにおいより強くなるように調整します。

ハッカ油をいれて、振って攪拌します。

ハッカ油例(20ml)
ハッカ油20mlサイズ

ハッカ油例(100mlサイズ)
ハッカ油100mlサイズ

ハッカ油は昔からカビ防止、蚊などの虫除けや抗菌剤としても使われてきました。

まえかわのぶひろ

前川修寛

ハッカ油を台所で使ってみたらゴキブリがいなくなりました。ただ、強烈な香りを嫌がる犬や猫もいるかもしれません。

ハッカ油にはメントール成分が含まれており、このメントールを構成するモノテルペン炭化水素類は抗菌作用が強いことで知られています。

攪拌して15分ほどおいて、泡が消えたら完成です。

エタノールとハッカ油を入れて出来上がった石けん水

POINT

酸化防止剤としてエタノール類を1~5%
酸化防止剤を入れない場合は早く使い切る
仕上げにハッカ油を1~2%
攪拌して泡が消えたら完成

まえかわのぶひろ

前川修寛

完成したら、早速使って見ましょう。

使い方 

石けん水を手に適量を振りかけて、液体が白くなるまでよくこすりあわせましょう。約30秒手を洗うのと同じ手順で白さがなくなるまで、とくに手指と手首には丹念にすり込みます。

実際に使って見ると、ハンドクリームを手に塗っている感じです。さらにハッカ油のメントール成分による清涼感とハッカ油のいい香りがします。

さらに水が使える場所なら、通常の手洗い石けんとしても使えます。

なお、手指消毒アルコールを使った後は乾かしてから使うようにします。

POINT

手を洗うのと同じようによくこすりあわせて30秒以上
手指と手首にはよくすりこんで

使用上の注意

もしお肌に合わない場合は使用を中止してください。

まえかわのぶひろ

前川修寛

わたし自身で4週間連続で外に出る前、建物に入る前、帰宅してから、寝る前など頻繁に使って安全性を確認しましたが、手指消毒アルコールを何度も使うより手荒れが出ないのが楽です。

小さな子供がいる家では誤って口に入れないよう、保管には注意してください。

まえかわのぶひろ

前川修寛

小さな子供が誤って舐めてしまっても「苦い!」と感じる配合にしています。実際に自分でなめて確認しましたが、とても苦いです。
POINT

お肌に合わない場合は使用を中止してください
小さな子供の口に誤って入らないように

 

まえかわのぶひろ

前川修寛

次の記事で石けんやハッカ油の抗ウィルス性・抗菌性の根拠を説明しています。詳しく知りたい方はぜひお読みください。

石けん水の効用などを考証しように続きを書いています。
根拠を読みに行く