「障害者雇用水増し問題」に隠された実情

連日報道される「障害者雇用水増し問題」、マスコミ自体がこれまで身体障害者雇用の問題すら報道していなかったのに、いきなり大々的に報道しはじめたのは不可解です。
 
我が国の身体障害者の雇用促進に課題がないとは思いませんが、一面的な話の取り上げ方には当事者達の視聴率を集めたいがためのマッチポンプ工作を疑った方がいいでしょう。
 
この話、最初は精神障害での話だったものが、いつのまにか身体障害者全体の話になっているのは不可解です。
 
同じ時期の8月28日にあった「関西生コンのトップを逮捕 滋賀の生コン業者の恐喝未遂事件」がほとんど報道されない辺りを見ると、意図的な世間の注目そらしか、総裁選を控えた安倍晋三総理大臣を叩くキャンペーンともいえそうです。

この話は本来、

○障害の分類の問題
○雇用制度の問題
○厚生労働省の解釈の問題
○雇用する現場の対応の問題
 
といった具合に切り分けて、系統立てて、問題を洗い出して、解決する方法を考えていくのが筋ですが、明らかに前提となる知識すらない話までも、ごちゃ混ぜに混同して報道されています。
 
身体障害者手帳は大まかに、身体、精神、療育の3つがあります。
 
この他に手帳を持たないものとして、統合失調症、そううつ病、てんかんの方といった「心身の障害があるために長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な方」は医師の診断書によって代替できる事になっています。
 
こうした方々も障害者雇用の対象にもなっています。
  
「診断書だけで身体障害者と判断した」話がありますが、統合失調症は診断書だけでよいので、これが切り取られて報道された可能性もあります。
  
もし、元来いた職員が統合失調症など心身の障害を持つようになり、健康診断などで医師の診断書によって、障害者雇用の算入対象になったのであれば、ガイドラインの解釈と判断の問題でしょう。
 
身体障害者手帳発行は医師が発行する専用の診断書が必要で、健康診断の結果だけでの判断はできないのですが、詳しい話は不明です。
 
病気や事故で心身に障害を持った職員を辞めさせず、仕事が続けられるようにする措置は以前から行われています。その意味では非常に良い措置です。
 
ただし、このやり方では雇用率を達成しても、新たに障害を持つ人を雇用できていなかったことになりますから、これは問題でしょう。
 
身体障害者雇用促進の目的は「障害者雇用の機会と実数を増やす」事です。
 
これに対して、ガイドラインの「障害者雇用率を上げる」事がこのやり方で良いと誤って解釈されて続いてきたのが問題だといえますが、あたかも官公庁が全体でずっと隠してきたかのように報道されていますね。
 
いずれにせよ本腰を入れて対応しなければならない話であり、民間もこれに続かなければなりませんから、対岸の火事ではありません。
 

身体障害者と働きたくない?

今回の話は「身体障害者と働きたくない」とは別の課題なのですが、あちこちのコメントでチラホラ出てくるので少し。
 
これはわたしも経験しました。
 
最初は怒っていましたが、相手と話を重ねるコミュニケーション力を高めていくにつれて、様々な背景がある事に気づきました。

「2級の聴覚障害者でも訓練したら電話ができるはず」「身体障害者を入れて散々な思いをした」や「頑張って努力したら健常者並にできるはず」といった思い込みから来ている話もありました。
 
いずれも現場の人の考え方や対応に「解決しなければならない問題」がある事なので、それをどうしたらよいかを考えた方がいいでしょう。
 
「差別だ!」といって社会や他人を叩く事はできますが、過去に条件反射で怒りで返す事をやらかして、いらぬ対立を招いた人達のとばっちりを食らっている面もあります。
 
わたしたちはこの話があたかも大多数であるかのような印象報道によって、しなくてもいい対立を煽られないように用心した方がいいでしょう。